依頼者情報
依頼者:被相続人の長女
相手方:不動産に残存する仮登記権利者の相続人(多数)
争点別:相続した不動産に仮登記がある場合の売却
遺産額:数千万円
遺産の種類:不動産
解決期間:約1年
事案の内容
依頼者は、父親から相続した実家の土地・建物を売却することを考えました。
ところが、この不動産には相当以前に亡くなっていた人物を権利者とする実体のない、古い所有権移転仮登記が残っていました。そのため、不動産の売却を実現するためには、その仮登記権利者の相続人全員(多数)から同意を得て、仮登記を抹消することが必要でした。
当事務所の活動内容
数十名いた相続人に状況を丁寧に説明した結果、ほとんどの方は仮登記の抹消に同意してくださいましたが、数人からは同意を得ることができなかったため、やむを得ず訴訟を提起しました。
結果
なにぶん古い時代の出来事を証明しなければならない事案でしたので、取引にまつわる客観的証拠は非常に少ない状況でした。そ
こで、当方は発想の転換を図り、長年の占有に基づく時効取得を主張することを思いつきました。すでに相続によって所有権を取得していた不動産ですが、重ねて時効の主張もすることによって、仮登記の権利が消滅したという理屈です。
この訴訟に勝訴した結果、想定よりも短期間で仮登記の抹消に成功し、「きれいな」不動産とすることができました。これにより、依頼者の満足のいく価格で不動産を売却することが実現しました。
事件処理のポイント
相続が絡む案件は、時間の経過によって、関係者の人数が非常に多数になることが、しばしばあります。このような場合、長期間にわたって積み上がった事実関係を弁護士がよく理解した上で、関係者に対して丁寧に事情を説明しなければ有利な解決を図ることが出来ません。
また、丁寧に説明しても理解を得ることができない関係者がいる場合、話し合いという手法にこだわらず、法律的知識を駆使して裁判で解決することがかえって良い解決をもたらすこともあります。
本件は、その両手段を上手に併用することによって解決した事案といえます。