相手方が財産管理しており将来的な遺産の減少に備えて成年後見人の制度を利用した事例

依頼者情報

依頼者:被相続人の長男

相手方:被相続人の長女

争点別:遺言・生前対策

遺産額:5億円

遺産の種類:預貯金、金融商品

解決期間:3か月

 

事案の内容

被相続人は、中等度以上に進行した認知症で、常時見守りが必要でした。そのため、依頼者の息子さん(被相続人の孫)が被相続人が独りで住んでおられた家に同居して介護にあたっている状況でした。

ところが、被相続人の財産である預貯金類は、すべてを相手方(被相続人の長女)の夫が管理していたため、被相続人の生活に必要な費用は,同居の孫や依頼者が、必要が生じる都度、相手方サイドにお願いして支出してもらっている状況で、依頼者側はたいへん不便を強いられているとのことでした。

また、相手方は、被相続人の預貯金類を保管しているだけではなく、これを株式や金融商品に投資して運用している模様で、場合によっては損失を出す恐れがあり、これによる将来の相続財産が減少してしまうリスクがありました。

依頼者は、このような不便の解消することと、相続財産が不当に減少することを防ぐ手段を講じたいとのことで、当事務所にお越しになりました。

 

当事務所の活動内容

将来の相続財産がいたずらに減少することを防ぐには、被相続人の預貯金類を相手方サイドから取り戻し、依頼者が管理することがベストであると考えられました。しかし、相手方は任意にこれに応じる姿勢がありませんでした。

 

そこで、当事務所では、成年後見の申立を行いました。本件は財産の金額が大きく、兄姉間に紛争性がみてとれる事案ですので、想定どおり、成年後見人には裁判所が選任した弁護士が選任され、相手方は被相続人の財産のすべてを成年後見人に引き渡すこととなりました。

その上で当事務所は、裁判所と成年後見人に上申書を提出し、被相続人の財産について相手方サイドがこれまでに行ってきた投資や運用の状況を調査してもらいました。そして、全ての資産を現金化した上で日本国内の銀行に対する安全な銀行預金の形で保管するように求めました。

 

結果

当方の上申が全て認められ、被相続人の財産のうち、金融商品の形になっていたものは解約され、国内の定期預金の形で保管されることとなりました。また、被相続人は、非常に快適な老人ホームに入所することとなり、以前よりも活き活きとして、幸せに生活しておられます

 

事件解決のポイント

相続発生前の段階で将来の相続財産が不当に減少する恐れがある場合に、成年後見の申立を活用するということは比較的多く行われていると思われます。

ただ、成年後見の制度には硬直な面があり、この事案のように第三者である弁護士等が成年後見人となる場合には、親族の判断で財産の処分を柔軟に行うことが出来なくなってしまいます。

 

そこで、当事務所では、成年後見制度を活用するかどうかは、メリット・デメリットを事案毎に慎重に検討し、依頼者が納得される形で進めるべきであると考えています。この事案は成年後見制度によって、非常に満足のいく結果が得られました