依頼者情報
依頼者:被相続人の長男
相手方:依頼者の甥(二男の子・代襲相続人)
争点別:遺留分の請求を受けた(特別受益の考慮)
遺産額:3億円
遺産の種類:預貯金
解決期間:1年
事案の内容
被相続人は、依頼者のお母様です。相続人は依頼者(長男)と先に死亡しておられた二男の甥(代襲相続人)の2名でした。
お母様は、公正証書による遺言で、全財産を老後の面倒を見てくれた長男に相続させるとしておられました。
依頼者は、この遺言の存在を知っており、四十九日の法要を済ませてから、話し合いをしようと考えていました。ところが、葬儀の直後、突然相手方の代理人弁護士から内容証明郵便が届き、驚いて当事務所にご相談にいらっしゃいました。相手方は、公正証書遺言の検索サービスを活用して、いち早く遺言書の存在に気づいたのだと思われました。
相手方は、代襲相続人として遺留分を主張していました。しかし、相手方の父親(依頼者の弟)は生前、脱サラして興した事業に失敗しまい、多額の借入金をお母様(被相続人)に肩代わりさせていました。また、お母様は、長期にわたって、相手方家族4名の生活を支えるための資金援助をしていました。
そこで、依頼者は、この借金肩代わりや資金援助(生前贈与)の事実を遺留分の算定にあたって考慮して、できるだけ支払う金額を低く抑えたいとのご希望をお持ちでした。
当事務所の活動内容
当事務所は、相手方に内容証明郵便による返信をし、被相続人が生前多額の資金援助をした事実を指摘し、これを考慮した上で支払うべき遺留分の金額について協議することを申し入れました。
肩代わりして返済した借金については、金融機関の資料もあり、証明は容易でしたが、それよりも金額が多く膨らんでいたはずの生活費援助については、領収証や銀行取引履歴がないため、工夫が必要でした。
そこで、被相続人が毎日付けておられた日記風のメモ帳の記載を丹念に追い、これを銀行からの引き出しとリンクさせました。また、相手方一家の生活イベント(七五三、入学、進学等)と関連づけて、生前贈与の事実が浮かび上がるようにしました。
しかし、相手方はどうしても納得しなかったので、当方より、調停を申し立てました。
結果
調停では、調停委員会が、当方の主張を全面的に指示し、その結果、非常に少ない遺留分侵害額の支払い(調停外での相手方の主張の10分の1程度)で調停が成立しました。
事件処理のポイント
生活費援助等の領収証が不足している生前贈与は証明が困難です。しかし、あきらめてしまわず、銀行の取引履歴、日記等の記載を客観的な出来事と丁寧に関連づけることによって、調停委員や裁判官を納得させることのできる資料を作ることが出来ます。
本件は、このような作業に成功したことがポイントでした。