相手方に有利な遺言に対して諦めずに被相続人の遺言能力の欠如を主張した事例

依頼者情報

依頼者:被相続人の長男・長女

相手方:被相続人の兄(受遺者)

争点別:遺言無効、遺留分

遺産額:3000~4000万円

遺産の種類:不動産(土地)、預金

解決期間:3年

 

事案の内容

依頼者の父親(被相続人)は、家族と離れて老後を故郷で暮らし、そこで亡くなりました。

被相続人は、亡くなる直前に公正証書遺言を作成していました。その遺言の内容は、被相続人が所有していた土地の大部分を兄(相手方)に遺贈し、残りの土地についても、兄に対する借金についての抵当権を設定するというような一方的な内容でした。

依頼者は、父親が亡くなる4年前くらいから、相手方に妨害され、父親に会わせてもらえないようになっていました。そのため、これらの事実を父親が亡くなってから初めて知らされました。

依頼者としては、これまでの父親との関係性からしても、最後に父親に会ったときのかなり認知症の進んでしまっていた様子からしても納得できないということで、当事務所に相談に来られました

 

当事務所の活動内容

依頼者によれば、話し合いによる解決を望まないとのことでしたので、速やかに訴訟を提起し、遺言無効と遺留分減殺を主張しました。

遺言無効については、公正証書遺言を作成した当時の認知能力を立証するために、介護記録、かかりつけ医の医療記録、父親が東京に来た際に会った旧友の陳述書などを書証として提出しました。さらに、かかりつけ医に対する証人尋問も実施しました。

 

結果

この事案は、かなり悩ましい事案だったようで、裁判所からは、尋問手続まで実施した後で、なお結論について悩みがあるという形での和解提案が出されることになりました。

最終的には、裁判所からの和解提案をベースにする形で、和解による中間的解決を実現しました。

 

事件解決のポイント

この事案については、生前のある時点で被相続人との接触が断たれてしまっていたにもかかわらず、それ以降の被相続人の病状を立証する必要があったという点に、大きな困難がありました

しかし、このような事案でも簡単にあきらめてしまわないことが肝心です。介護記録・医療記録を収集することはもちろんのこと、被相続人と生前に接触があった可能性のある関係先に網羅的にあたってみることにより、活路が見いだせる場合があります。