不正出金を疑い代償金の支払いを拒絶している相続人に対し、介護の詳細を説明して和解することが出来た事例

依頼者情報

依頼者:被相続人の二男

相手方:被相続人の長女

争点別:遺産分割協議・不当利得返還請求(生前の預金引き出し)

遺産額:数千万円

遺産の種類:不動産

解決期間:約1年半

 

事案の内容

相続の発生は数年前のことで、相続財産としては複数の不動産が遺されていました。

当事務所にご相談いただく前に、依頼者と相手方を含むきょうだい3人で遺産分割協議が行われており、一部の不動産についてのみ協議が成立していました。
その合意内容は「相手方である長男がその土地を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金を500万円ずつ支払う」というものでした。

しかし、相手方は「被相続人の生前に預金口座から多額の金銭が引き出されている。これは依頼者の使い込み(不当利得)なので、その返還請求権と相殺する」という理由を述べて代償金の支払いを拒否していました。

 

当事務所の活動内容

まず相手方本人と連絡を取り、合意書を示して代償金支払いを求めましたが、相手方はあくまで支払いをしようとしなかったため、訴訟を提起しました。

 

結果

訴訟(代償金の支払い請求)では、当方の訴状における請求どおりの内容で和解することができました。

また、弁護士が関与する前に行われていた遺産分割協議は一部の不動産のみについてしか成立していませんでしたので、この機会に他の複数の不動産についても一挙解決しようと、訴訟終了後も相手方との交渉を続けました。

その結果、他の全ての不動産についても、相手方と協力して任意売却したうえで代金を分割取得することができました。

 

事件解決のポイント

被相続人の預貯金を依頼者が管理していたことは事実だったので、事件解決のポイントは、依頼者による出金の使途(被相続人の生活・介護のために費消したこと)をどこまでこちらが立証できるかでした。

 

この点、依頼者の手元には証拠(領収書等)はほとんど残っておらず、当初、立証は難航するかと思われました。
しかし、地道な面談で依頼者から断片的な記憶を引き出し、わずかながら残存していた領収書類、被相続人の生活レベルや行動パターン、性格、嗜好等の断片的な情報を関連づけることによって、地道に必要経費の額を積み上げていきました。

 

その結果、預金口座からの出金使途は、使い込みなどではなく、被相続人の生活・介護のためであるというこちらの主張に裁判官も理解を示し、その後の和解交渉を非常に有利に進めることができました。